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令和7年も残すところ約2ヶ月となりました。従業員を雇用されている串本町の事業者の皆さんにとって、年に一度の重要な手続きである年末調整の準備時期がやってまいりました。

今年の年末調整は例年と大きく異なります。令和7年度税制改正により、基礎控除や給与所得控除の大幅な引き上げ、新たな「特定親族特別控除」の創設など、これまでにない大規模な変更が適用されます。

特に注目すべきは「103万円の壁」から「160万円の壁」への変更です。パートタイマーの従業員を雇用されている事業者の皆さんにとって、労務管理や従業員への説明において重要な変更となります。

この記事では、令和7年年末調整で変わる重要なポイントを5つに絞って解説いたします。この記事を読むことで、1)新しい税制改正の内容を正確に理解でき、2)12月までに準備すべき具体的な手続きが分かり、3)串本町商工会のサポートを効果的に活用する方法が身につきます。

適切な準備により、スムーズで正確な年末調整を実現しましょう。

国税庁:令和7年分年末調整のしかた
国税庁:年末調整がよくわかるページ(令和7年分)

今年の年末調整が「特別な年」である理由は、令和7年12月から適用される大規模な税制改正にあります。この改正は、継続する物価上昇による家計負担を軽減し、パートタイマーなどの「就業調整問題」を解決することを目的としています。

◆国税庁:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

まず、基礎控除の大幅な引き上げです。これまで一律48万円だった基礎控除が、所得の低い層では最大95万円まで引き上げられます。次に、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。

さらに、大学生世代を持つ家庭への支援として「特定親族特別控除」が新設されます。19歳から22歳の子供がアルバイトをしても、親の税負担が急激に増えないよう配慮された制度です。

最後に、これらの変更に伴い扶養親族等の所得要件も10万円引き上げられ、より多くの家族が控除対象となります。

これらの変更は令和7年12月1日から適用されるため、11月までの源泉徴収は従来通り行い、12月の年末調整で新しいルールに基づいて1年分の税額を再計算します。つまり、今まさに準備を始めなければならない時期なのです。

従業員への説明資料の準備、新しい申告書の配布、そして商工会への相談予約など、やるべきことは山積みです。早めの準備が、12月の繁忙期を乗り切る鍵となります。

長年にわたって日本の税制の象徴だった「103万円の壁」が、令和7年から事実上「160万円の壁」に変わります。この変更は、パートタイマーの従業員を多く雇用する事業者にとって、労務管理の根本的な見直しが必要となる重要な変更です。

新しい基礎控除(最低所得層向け)95万円と、新しい給与所得控除(最低保障額)65万円を合計すると160万円となります。これにより、年収160万円までは所得税が課税されません

従来は年収103万円を超えるとすぐに所得税が発生していましたが、新制度では160万円まで非課税となります。これは年収で57万円もの大幅な引き上げです。

パートタイマーの従業員からは「160万円まで働いても大丈夫なのか」という質問が予想されます。しかし、重要な注意点があります。

所得税の壁は160万円に変わりましたが、社会保険の加入義務が発生する壁(106万円または130万円)は変更されていません。従業員が「160万円まで大丈夫」と誤解して労働時間を増やした結果、社会保険料の負担で手取りが減る可能性があります。

事業者としては、税金の話だけでなく、社会保険の壁は依然として存在することを従業員に正確に伝える責任があります。誤解によるトラブルを防ぐため、11月中には従業員向けに説明を行うことをお勧めします。

厚生労働省『年収の壁について知ろう』

例えば、年収110万円のパートタイマーの場合、従来は所得税が発生していましたが、新制度では非課税となります。年収140万円の場合も同様に非課税です。これにより、多くのパートタイマーで税負担が軽減され、手取り収入が増加します。

従業員を雇用する個人事業主として、今回の税制改正で対応が必要な4つのポイントを具体的に解説します。これらすべてに適切に対応することで、法令遵守と従業員の満足度向上を両立できます。

配偶者や扶養親族の合計所得金額の上限が48万円から58万円に引き上げられました。給与収入では103万円から123万円への引き上げです。これまで収入がわずかに上限を超えていたために扶養から外れていた家族が、新たに控除対象となる可能性があります。

11月中に全従業員に対して、新たに扶養控除等の対象となる親族がいないか確認を行ってください。該当する場合は令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の再提出が必要です。

19歳から22歳の大学生世代の子供を持つ従業員に関わる新しい控除制度です。子供の年収が123万円から188万円の範囲で段階的に控除が適用されます。

該当する従業員からは給与所得者の特定親族特別控除申告書の提出が必要です。この制度を知らずに申告漏れがあると、従業員の税負担が本来より重くなってしまいます。

従来の複数の申告書が1枚に統合され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」となりました。

1枚で4つの申告を行うため、記載項目が大幅に増加し複雑化しています。従業員が記載箇所を間違えたり、内容を理解できずに空欄で提出したりするリスクが高まります。

新しい控除額と所得要件に基づいた計算が必要になります。国税庁から新しい「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が公表されているため、必ずこれを使用してください。

従来の源泉徴収簿では特定親族特別控除の計算に対応していないため、余白部分を活用するなどの工夫が必要です。計算ミスを防ぐため、可能な限り専門家のサポートを受けることをお勧めします。

国税庁:令和7年分年末調整Q&A

令和7年の複雑な税制改正に対応するため、串本町商工会では段階的なサポート体制を整えております。事業主の皆さんの状況とニーズに合わせて、最適なサービスをご活用ください。

まず、相談・指導サービスがあります。税制改正の内容説明、新しい申告書の書き方指導、計算方法の確認など、専門家による個別相談を行います。令和7年の複雑な税制改正については特に重点的にサポートいたします。会員の皆さんは無料でご利用いただけます。

次に、自計化支援サービスです。商工会クラウド会計【MA-1】の導入支援や操作指導を通じて、事業者の皆さんが自分で記帳から年末調整まで対応できるよう支援いたします。デジタル化により効率的な経営管理が可能になります。

さらに、事業計画支援などの専門的な経営サポートにも力を入れております。年末調整を機に、来年度の事業計画や経営改善についてもご相談いただけます。

従業員の給与データとして、1月から12月までの給与・賞与支払明細、源泉徴収税額の合計額、中途入社者の前職源泉徴収票をご準備ください。

従業員提出書類では、扶養控除等(異動)申告書、新様式の基礎控除等申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除関連書類が必要です。

控除関連証明書類として、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、国民年金保険料控除証明書、住宅ローン年末残高証明書などをお持ちください。

年末調整準備物チェックリスト

今年の税制改正は計算ロジックや申告書の様式が複雑化しているため、これまで自力で対応してきた事業主の方も、少なくとも相談サービスをご利用いただくことを強くお勧めします。

専門家のチェックにより計算ミスや申告漏れのリスクが大幅に軽減されます。また、煩雑な事務作業から解放され、本来の事業に集中できる時間を確保できます。

年末調整の相談やサポートサービスについては、お早めに串本町商工会までご連絡ください。

◆串本町商工会 電話:0735-62-0044 住所:〒649-3503 和歌山県東牟婁郡串本町串本2410

12月に入ると相談が集中するため、11月中のご予約をお勧めいたします。

令和7年年末調整を成功させるために、今から12月までの具体的なスケジュールとやるべきことを時系列で整理いたします。計画的な準備が、年末の繁忙期を乗り切る最も確実な方法です。

まず、全従業員に年末調整に必要な申告書を配布します。令和8年分扶養控除等(異動)申告書と、新しく統合された令和7年分の基礎控除等申告書、保険料控除申告書の3種類が基本セットです。

重要なのは、書類配布と同時に従業員向けの説明を行うことです。「160万円の壁」への変更、特定親族特別控除の新設、複雑化した申告書の記載方法について、説明しましょう。

特に、税制上の壁と社会保険上の壁が異なることを必ず説明してください。誤解によるトラブルを防ぐため、この段階での丁寧なコミュニケーションが極めて重要です。

厚生労働省『年収の壁について知ろう』

11月25日頃を社内締切として、すべての従業員から申告書を回収します。提出された書類は、記載内容の確認だけでなく、必要な証明書類が正しく添付されているかも含めて徹底的にチェックしてください。

生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、国民年金保険料の控除証明書、住宅ローンの年末残高証明書など、証明書類の不備は年末調整の計算に直接影響します。

中途入社の従業員については、前職の源泉徴収票が必須です。この段階で不備があれば、速やかに従業員に連絡して再提出を求めてください。

回収した書類に基づき、新しい控除額と計算表を使用して各従業員の年税額を算出します。令和7年1月から11月までは従来の源泉徴収税額表で天引きしているため、12月の年末調整で新ルールとの差額を精算します。

計算は従来より複雑になっているため、不安がある場合は商工会に相談することをお勧めします。計算ミスは従業員の信頼を損なうだけでなく、税務署への修正申告が必要になる場合もあります。

年末調整完了後は、各従業員への源泉徴収票交付、税務署への法定調書提出、源泉徴収所得税の納付を1月31日までに完了させます。

納付期限は原則1月10日ですが、納期の特例を受けている場合は1月20日となります。期限を過ぎると延滞税が発生するため、必ず期限内に完了させてください。

  1. 11月中に従業員向け説明会の日程を決定し、案内を配布
  2. 新しい申告書様式を、必要部数を印刷
  3. 串本町商工会に相談の連絡
  4. 従業員数×必要書類種類分のファイリング準備

これらの準備を怠ると、12月に大きな混乱を招く可能性がありますのでお早めに着手することをお勧めします。

令和7年年末調整は、税制改正により例年以上に複雑で重要な手続きとなります。今回の記事でお伝えした5つのポイントを改めて整理いたします。

新しい「160万円の壁」の理解と従業員への正確な説明、扶養親族等の所得要件緩和への対応、特定親族特別控除という新制度への対応、複雑化した申告書への対応です。

12月の年末調整を実施するために重要なのは、「今からの準備」です。11月中の従業員説明、書類配布と回収、そして必要に応じた相談が不可欠です。

まず、従業員向けの説明を行ってください。次に、新しい申告書の準備と配布を11月の早めに完了させましょう。そして、串本町商工会への相談予約を早めに行ってください。

令和7年の税制改正は専門性が高く、一人で対応するには負担が大きすぎます。串本町商工会では、事業主の皆さんの状況に応じた個別サポートを提供しております。

年末調整に関するご質問やサポートのご相談は、串本町商工会(電話:0735-62-0044)まで、お気軽にお問い合わせください。適切な準備により、安心して年末調整を完了しましょう。


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