• はっぴぃ。商い。行きます。聞きます。提案します。

師走に入ったばかりの12月1日、和歌山市で開催された「アトツギの挑戦と支援機関の取り組み」というセミナーに参加してまいりました。

「事業承継」というと、どうしても「株や税金の手続き」「親族内の話し合い」といった、少し重たくて難しいイメージをお持ちではないでしょうか。しかし、今回の会場で語られていたのは、そうした事務的な話ではありませんでした。

「家業の資産を使って、若い世代が新しい商売を始める」。 そんなワクワクするような「ベンチャー型事業承継」の最前線を目の当たりにしてきました。

今回の記事では、私が現場で聞いてきた「アトツギ(後継者)」たちの生の声と、串本町の事業者様にも知っていただきたい「攻めの承継」についてご報告します。「うちはまだ先の話だから」と思わず、ぜひ将来のヒントとしてお読みください。

【中小企業庁】~地域のアトツギの挑戦が地域の未来を創る~一般社団法人ベンチャー型事業承継について

家業の資源を活かした「第2創業」という考え方 12月1日、和歌山市で開催されたセミナーに参加し、講師の森田さんがおっしゃった「アトツギの定義」にハッとさせられました。「アトツギとは、単に事業を継ぐ人ではなく、家業の価値をアップデートして次世代へ渡す人」だというのです。

会場で事例として紹介されたのは、布団工場がアウトドアブランドになったり、建設会社が農業を始めたりといった、想像を超える変革の話ばかり。

これまでの「先代のやり方を守る」という承継のイメージとは随分違います。皆さんが長年築いてこられた信用や技術という「資産」があれば、若い後継者はゼロから起業するよりも、ずっと有利に新しい挑戦(ベンチャー型事業承継)ができる。そんな「家業の可能性」を再確認した時間でした。

県の担当者である山本さんが示されたデータも興味深いものでした。和歌山県は、売上100億円を超えるような成長企業の割合が全国でも低い水準にあるそうです。

しかし一方で、39歳以下の若い後継者が継いだ企業は、利益や従業員数の伸び率が非常に高いという結果も出ています。

つまり、若い方が「アトツギ」として挑戦することが、和歌山の経済を底上げする一番の近道だということです。

国や県が今、熱心に支援体制を整えているのは、皆さんの会社にそれだけの「伸びしろ」があるからこそなのだと、現場で強く感じました。

スムーズな承継には「第三者」の存在が鍵 トークセッションで登壇された京都の三木さん(三木盛進堂)の言葉には、思わず頷いてしまいました。「親父は新しいアイデアを一切やらせてくれなかった」というのです。これはあり得る話ですね。

三木さんの場合、ご自身で結果を出してから認めてもらうという方法をとりましたが、同時に「第三者(支援機関や金融機関)」の存在が大きかったとお話しされていました。

親子だとどうしても感情的な喧嘩になってしまうことでも、第三者が間に入り、客観的な計画として伝えることで、スムーズに進むことがあります。

家族だけで抱え込まず、私たち商工会をうまく「緩衝材」として使っていただければと思います。

「アトツギは孤独だ」。これも登壇者の皆さんが口を揃えておっしゃっていた言葉です。社内では経営者の子供として見られ、従業員には本音を漏らせない。

今回のイベントでも、グループワークになった途端、初対面のアトツギ同士が「実はうちも…」と切実な悩みを共有し合っている姿が印象的でした。業種は違っても、「親との関係」や「古参社員との付き合い方」など、抱える悩みは驚くほど共通しています。

「小さなコミュニティでもいいから作ることが大事」というお話がありましたが、串本町でもこうした「腹を割って話せる場」が必要だと痛感しました。

既存の販路を活かして全く別の市場へ挑戦 着物関連の資材卸を営む三木さんの事例は、非常に現実的でした。家業は斜陽産業で、コロナ禍で業績も縮小。「このまま継いでも会社が潰れてしまう」という危機感から、お父様に反対されながらも、自己資金500万円を使って「トレーディングカードゲーム」事業を始められたそうです。

一見突飛に見えますが、「印刷」や「資材」という家業の知識が活きる分野への挑戦でした。「3年で結果を出して、それから親父と承継の話をする」という冷静な計画には、覚悟を感じました。

今の業種にとらわれすぎず、少し視点を変えるだけで、家業にはまだ活かせる強みがあるのかもしれません。

京都・三木盛進堂のHPはコチラ

自転車メーカーのアトツギ、片岡さんの話も身につまされるものでした。コロナ禍で自転車需要は増えたのに、肝心の部品が入ってこない。製造業としては致命的な状況です。

そこで取り組んだのは、なんと「広報」でした。「父が良い自転車を作っているのに、知られていないのが悔しい」と、10件以上の取材を獲得し、知名度を上げました。

さらに、お店のある地域に人を呼ぶためにレンタルサイクル事業も開始。

モノが作れないならファンを作ろうという、逆境をバネにした柔軟な発想は、私たちも学ぶべき点が多いと感じました。

京都・VIGOREのHPはコチラ

「アトツギ甲子園」や補助金の活用も。まずは商工会の窓口でご相談ください イベントでは、後継者が新規事業プランを競う「アトツギ甲子園」という国の取り組みも紹介されていました。これに参加することで、家業の強みを棚卸しできたり、補助金の審査で加点されたりと、多くのメリットがあるそうです。

アトツギ甲子園公式サイトはコチラ

「うちは小さな店だから関係ない」と思われるかもしれませんが、串本町のような過疎地域だからこそ、若い方の「新しい商売」が必要とされています。

まずは商工会の窓口で、雑談がてら「こんなこと考えてるんだけど」とお話ししに来てください。一緒に未来の話ができれば嬉しいです。


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