
串本町の事業者の皆さん、こんにちは。12月も下旬に入り、串本も風が冷たくなってきましたね。年の瀬も押し迫り、お正月準備に追われている方も多いのではないでしょうか。
さて、最近の面談でよく耳にするのが、「最低賃金が上がって経営が苦しい」という切実なお悩みです。
「従業員の給料を上げてやりたい気持ちはあるけれど、先立つものがない…」
そんなふうに、一人で頭を抱えていませんか?
実は、そんなピンチをチャンスに変えるための「国の支援策」や「無料の相談窓口」がたくさん用意されています。
しかし、ここで緊急のお知らせがあります。多くの補助金や助成金が、年明け早々の1月に締め切りのピーク(いわゆる「1月の崖」)を迎えます。「年が明けてから考えよう」では手遅れになる可能性があります。
この記事では、私たち商工会が厳選した「今すぐ確認すべき5つの支援策」と、最新の制度変更ポイント、そして「和歌山働き方改革推進支援センター」の活用法について、丁寧に解説していきます。
決して簡単な話ではありませんが、制度の中身をしっかりと理解していただくことで、2026年を明るい気持ちで迎えるためのヒントが必ず見つかるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
目次

「11月からまた最低賃金が上がったけど、うちはこれ以上価格に転嫁できないよ…」。このような切実な声を多く耳にします。
令和7年(2025年)11月1日から、和歌山県の最低賃金は時間額1,045円に改定されました。前年からの大幅な引き上げは、私たち串本町の小規模事業者にとって、まさに経営を揺るがす大きな課題です。特に、原材料費や光熱費の高騰も続く中での人件費アップは、利益を直接圧迫します。
ランチタイムの忙しい時間帯にパートさんを2名雇っているとします。「時給を上げなければ人は集まらないし、今いてくれる人にも辞められたくない。でも、メニューの値段を上げれば常連さんが離れてしまうかもしれない」と、経営者の方は夜も眠れないほど悩んでおられるかもしれません。
しかし、どうか一人で抱え込まないでください。この課題は、経営努力だけで解決するには限界があります。だからこそ、国や県も手厚い支援策を用意しています。「賃上げなんて無理だ」と諦める前に、まずは使える制度がないか、私たちと一緒に探してみませんか? 次の章では、そのための強力な助っ人をご紹介します。

「就業規則を見直したいけれど、誰に頼めばいいか分からない」「専門家に頼むとお金がかかる」そんな不安をお持ちの方にぜひ活用していただきたいのが、「和歌山働き方改革推進支援センター」です。
ここは、厚生労働省の委託事業として運営されており、社会保険労務士などの専門家が、中小企業・小規模事業者の皆さんの相談に無料で応じてくれる公的な窓口です。電話やメールでの相談はもちろん、専門家が直接あなたのお店や会社に来てくれる「訪問相談」も行っているのが大きな特徴です。
具体的には、以下のような「お困りごと」をワンストップで解決してくれます。
「まだ相談内容がまとまっていない」という状態でも構いません。「なんとなく労務管理が不安だ」というレベルからでも、親身になって話を聞いてくれます。串本から和歌山市のセンターまでは距離がありますが、オンライン相談や訪問支援を活用すれば、距離の壁は感じません。
◆和歌山働き方改革推進支援センター(詳細はこちら)

「賃金を上げたくても原資がない」。その悩みを解決するために、国は「生産性を上げて(稼ぐ力をつけて)賃金に還元する」取り組みを強力にバックアップしています。
ここでは、特に串本町の事業者の皆さんが活用しやすい5つの助成金・補助金について、最新の変更点を含めて詳しく掘り下げて解説します。

まず最初に検討していただきたいのが、厚生労働省の「業務改善助成金」です。この制度は、事業場内で一番低い時給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、それと同時に生産性向上のための設備投資を行った場合に、その設備費用の大部分を国が助成してくれるというものです。
一般的な活用事例として、レジ締め作業に毎日1時間以上の残業が発生している小売店を想定します。そこで、この助成金を活用して「POSレジシステム」を導入します。その結果、在庫管理が自動化され、レジ締め作業は15分に短縮。浮いた人件費分を原資にして、パート従業員の時給をアップさせることが可能になります。
本助成金の第2期申請期限は2025年12月26日となっており、期限が非常に切迫しています。第3期の募集再開などの情報も注視が必要ですが、何より注意すべきは「事業完了期限」です。
原則として2026年1月31日までに「機器の納品・支払い」と「賃金の引き上げ」を完了していなければなりません。年末年始を挟むため、機器の納入が間に合わないリスクがあります。検討中の方は、「間に合うかどうか」も含めて大至急ご相談ください。
◆業務改善助成金についてはコチラの公式サイトもご覧ください。

次にご紹介するのは、同じく厚生労働省の「キャリアアップ助成金」です。パートタイムやアルバイトなどの非正規雇用の方を、会社の中でステップアップさせた場合に助成される制度です。
特に「正社員化コース」は、パートさんを正規雇用の社員に転換した場合に助成されますが、2025年度より要件が変更されていますのでご注意ください。
串本町の観光業やサービス業で、長く働いてくれているベテランのパートさんがいれば、この80万円コースの対象になる可能性があります。逆に、採用して間もない方(3年未満)の正社員化は40万円となりますので、試算の際はご注意ください。
◆キャリアアップ助成金についてはコチラの公式サイトを御覧ください。

業務効率化のためにパソコンやソフトを導入したいなら、経済産業省の「IT導入補助金」です。こちらは2025年末の補正予算に関連し、「デジタル化・AI導入補助金」へと名称や支援内容がリニューアルされる見込みです。
従来対象外だったAIを活用したツールなども支援対象に含まれる可能性があります。「AIなんて難しそう」と思われるかもしれませんが、例えば「AIが自動で返信文を作ってくれる予約管理システム」なども対象になるかもしれません。
特に「インボイス枠」では、会計ソフトなどとセットであれば、パソコン、タブレット、レジ、券売機などの購入費も補助対象になります。「古くなったレジを買い替えたい」「事務用のパソコンも新調したい」という方には絶好のチャンスです。
今年度のインボイス枠などの最終締切は2026年1月7日(水)17:00となる可能性が高いです。年明けすぐが事実上のラストチャンスです。もし活用を検討されているなら、大至急、IT導入支援事業者(販売店)に連絡を取り、申請手続きを進める必要があります。
◆IT導入補助金2025の公式サイトはコチラ

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」は、新製品や新サービスの開発、生産プロセスの改善など、経営革新に挑戦する事業者を支援する大型の補助金です。
串本町においては、地元の特産品を活用した新しい加工食品の開発や、宇宙産業関連の部品加工トライアルなどに活用できます。
第22回公募(締切:2026年1月30日)からは、申請要件として「給与支給実績のある従業員が1名以上いること」が必須となりました。
つまり、従業員0名の個人事業主様などは申請ができなくなっています。ご自身が対象になるかどうか、申請前に必ず要領をご確認ください。
◆ものづくり補助金の公式サイトはコチラ

最後にご紹介するのは、「中小企業省力化投資補助金」です。人手不足解消に効果があるロボットやIoT機器を、「カタログ」から選んで導入できる手軽さが特徴です。
当初は公募期間が区切られていましたが、「カタログ型」については利便性向上のため随時受付に変更されています。2月を待たずに申請の準備が可能です。
また、対象製品カテゴリーも大幅に追加されました。
など、飲食店や製造業の現場で「すぐに役立つ」身近な機器が増えています。「ウチにはロボットなんて関係ない」と思っていた方も、ぜひ一度カタログを覗いてみてください。
◆中小企業省力化投資補助金の公式サイトはコチラ

国の制度だけでなく、私たちの地元・和歌山県独自の支援策もあります。
特に「わかやま中小企業元気ファンド」は、県内でも最も認知度の高い助成金の一つです。これは、和歌山県の地域資源(農林水産物や観光資源、技術など)を活用して行う新商品・新技術開発や販路開拓を支援するものです。
助成金額は最大600万円(助成率3分の2以内)と手厚く、串本町の事業者にとっても非常に魅力的な制度です。「串本の食材を使った宇宙食を開発したい」「ロケット見学客向けのお土産を作りたい」といった、地域ならではのアイデアをお持ちの方にはぴったりです。
募集締切は2026年1月16日(金)となっています。アイデア段階からでもぜひご相談ください。
◆わかやま中小企業元気ファンドの公式サイトはコチラ
ここまでご紹介した内容について、事業者の皆さんからよくいただく質問をまとめました。
Q1. うちのような、家族中心の小さなお店でも対象になりますか?
A1. もちろんです!
「業務改善助成金」や「IT導入補助金」などは、小規模事業者の方にこそ活用していただきたい制度です。ただし、「ものづくり補助金」のように従業員が1名以上いないと申請できないものもありますので、まずは商工会にご相談ください。
Q2. 申請書類を書くのが苦手で、手続きが難しそうです…。
A2. 私たち専門家がしっかりサポートします。
補助金の申請書類は確かに複雑なものもありますが、一人ですべて書く必要はありません。商工会の職員や、今回ご紹介した「和歌山働き方改革推進支援センター」の専門家が、書き方のポイントをアドバイスしたり、書類作成のお手伝いをしたりします。
Q3. すでに賃上げをしてしまったのですが、今からでも申請できますか?
A3. 制度やタイミングによります。
例えば「キャリアアップ助成金」などは、取り組みを始める前に「計画届」を労働局へ提出する必要があります。事後の申請が難しいケースが多いですが、制度によっては特例措置などでカバーできる可能性もゼロではありません。自己判断で諦めてしまう前に、まずは正確な状況をお聞かせください。

物価高に人手不足、そして最低賃金の引き上げ。経営環境は確かに厳しいですが、それを乗り越えるための支援策もまた、充実しています。
しかし、繰り返しになりますが、多くの補助金の締め切りが1月上旬から中旬に集中しています。
「お正月が明けたら考えよう」と思っていると、気づいた時には締め切りを過ぎていた…ということになりかねません。
私たち串本町商工会は、皆さんの「挑戦したい」「会社を良くしたい」という想いを全力で応援します。
【絶対にお見逃しなく!新年の相談会情報】
来る令和8年(2026年)1月8日(木)、串本町商工会にて「経営特別相談会」を開催します。
日本政策金融公庫の担当者や、よろず支援拠点の専門家が一堂に会します。1月の締め切りラッシュに間に合わせるための、事実上のラストチャンスとなる相談会です。
資金のこと、補助金のこと、労務のこと。モヤモヤしている悩みを、ここで一気に解消してしまいましょう。
▼1月8日開催「一日公庫・経営特別相談会」の詳細・ご予約はこちら:【1月8日(木)】お困り事!ワンストップ支援!経営特別相談会のお知らせ/広域商工会東牟婁協議会
皆さまと笑顔でお会いできるのを、職員一同楽しみにしています。寒い日が続きますが、お体ご自愛くださいね。