• はっぴぃ。商い。行きます。聞きます。提案します。

2025年小規模企業振興基本法改正は、「広域連携による経営支援センター」という新たな枠組みを導入し、複雑化・高度化する小規模事業者の経営課題に対応するための画期的な転換点となる。この取り組みは2026年度から実施される予定であり、今回はその「役割と効果」、「職員重視の組織運営」、「職員スキルアップ」、「会員事業所のノウハウ取得」について概略を説明します。

小規模企業振興基本計画(第Ⅲ期)
改正小規模事業者支援法に基づく政令・省令・基本指針改定

センターは、従来の支援領域を超えた高度な課題に対応するための「専門家集団」として機能すべきである。

  • 現代的課題への対応: 構造的な人手不足、事業承継問題、原材料価格の高騰と価格転嫁、DX(デジタル化)・GX(脱炭素化)への要請など、個別の商工会では対応困難な専門的・広域的な課題を担う。
  • 広域連携によるシナジー創出: 複数の市町村にまたがるサプライチェーンの最適化や地域資源の共同活用を可能にする。「経営力再構築伴走支援」のハブ(中核拠点)となり、金融機関や士業などの外部支援機関との連携を強化し、多角的なワンストップ支援を提供する。

職員の兼務による混乱を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを両立させるため、以下の組織設計を提案する。

  • 役割分担の明確化とマトリクス型組織の導入:
    • 商工会: 地域密着型の日常的・定型的な相談業務(記帳代行など)を主担当とする。
    • 経営支援センター: 専門的・広域的・非定型的な経営課題(事業再構築計画策定、DX導入支援など)を主担当とする。
    • 職員は両組織に籍を置きつつ、業務内容に応じて指揮命令者(商工会長 or 支援センター長)が明確に切り替わる「マトリクス型組織」を導入する。
  • 指揮命令の一元化・情報共有システムの構築: 案件ごとに「主担当部署」を定め、その長が一元的に指揮命令権を持つルールを徹底する。クラウド型の顧客管理システム(CRM)を発展させ、支援履歴や進捗状況を一元管理し、リアルタイムでの情報共有を徹底する。
  • 職員の評価制度とキャリアパスの整備: 商工会での地域貢献とセンターでの専門的プロジェクトの成果を両輪で評価する人事評価制度を設計する。「地域密着支援のスペシャリスト」と「広域課題解決の専門家」のキャリアパスを明確化し、「良質な雇用」を創出・定着させるための戦略的ツールとする。

個々の自己啓発に依存せず、組織として体系的な育成システムを構築する。

  • 戦略:広域連携による体系的な研修プログラムの構築: 広域センターが主体となり、管轄内の全商工会職員を対象とした段階的な研修プログラム(基礎スキルとしての「対話と傾聴」、実務スキルとしての「小規模事業者持続化補助金」申請支援など)を企画・実施する。これにより、組織全体の課題解決能力向上と、職員間の人的ネットワーク形成を促す。
  • 戦術:OJTと外部専門家活用のハイブリッド型育成: 経験豊富な指導員と若手職員がペアを組むOJTを体系化し、研修内容のレポート化と共有を徹底する。よろず支援拠点や士業などの外部専門家を定期的に招聘し、最新知識のアップデートと連携の糸口を掴む。

職員の経験不足を組織全体でカバーし、地域の知見を継続的に蓄積・活用する体制を構築する。

  • 「巡回」から「目的志向の訪問」への転換: 従来の形式的な巡回を廃止し、事前にデータ分析と仮説立てを行い、訪問の主目的を「課題解決に向けた深い対話」と明確に位置づける。
  • ナレッジマネジメントシステムの構築と活用: CRMシステムを発展させ、会員事業所の強み、独自技術、成功体験といった定性情報をキーワードでタグ付けして体系的に蓄積・共有する「ナレッジマネジメントシステム」を構築。ノウハウの属人化を防ぎ、若手・転勤者への迅速な情報提供を可能にする。
  • 地域課題解決ワークショップの定例開催: 「人手不足」「観光客誘致」など広域的な地域課題をテーマにした事業者ワークショップを定期的に開催し、異業種間連携を促進するとともに、職員が地域のリアルな課題認識と解決の糸口を効率的に学ぶ機会とする。

「役割の明確化と連携を軸とした組織設計」「体系的な人材育成戦略」「組織的なノウハウ取得の仕組み」は相互に連携する三位一体の解決策である。

これらの施策により、経営支援センターと商工会は、職員の成長が質の高い伴走支援となり、小規模事業者の「良質な雇用」創出と地域経済の持続的発展に貢献するという、理想的な好循環を生み出す学習する組織へと進化を遂げる。

※次回からは1、2、3、4についてもう少し詳しく説明していきます。


今すぐ電話