2024年改訂：中小M&Aガイドライン解説【M&Aを検討中の皆さまに知っておいてほしい重要ポイント】

中小企業のM&A（合併・買収）に関する重要なガイドラインが改訂されました。この改訂は、串本町の小規模事業者の皆さまにとっても重要な意味を持つ可能性があります。

今回の改訂では、M&Aの手続きをより透明で公平なものにするための新しい規則が導入されています。これらの変更は、事業の売却や買収を検討している方々にとって、より安心してM&Aに取り組める環境を整えることを目指しています。

中小M&Aガイドライン改訂の概要

中小企業庁は、2024年8月に中小M&Aガイドラインの第3版を発表しました。この改訂は、中小企業のM&A取引をより公正で透明性の高いものにすることを目的としています。

★中小M&Aガイドライン改定（第3版）に関する概要資料：https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002-a.pdf

このガイドラインの詳細については、上記のリンクからご確認いただけます。
主な改訂ポイントは以下の通りです：

1. 仲介者・FAの手数料と提供業務の詳細説明の義務化
2. 広告・営業活動に関する規制の強化
3. 利益相反行為の禁止事項の具体化
4. 譲り渡し側の経営者保証の扱いに関する指針の追加
5. 不適切な事業者の排除に向けた取り組みの強化
6. ネームクリア・テール条項に関する規律の追加
7. 最終契約後の当事者間のリスク事項への対応の明確化

これらの改訂により、M&Aに関わる全ての当事者にとって、より公平で透明性の高い取引環境が整備されることが期待されています。

仲介者・FAの手数料と提供業務の詳細説明

今回の改訂で最も重要な変更点の一つが、仲介者やファイナンシャルアドバイザー（FA）の手数料と提供業務の詳細説明が義務化されたことです。

• 仲介者・FAは、契約締結前に手数料の詳細な算定基準を説明する必要があります。
• 提供する具体的な業務内容、担当者の保有資格、経験年数、成約実績などの情報も開示が求められます。
• 中小企業は、これらの情報を基に仲介者・FAを選定し、必要に応じて手数料の交渉も可能となります。

この変更により、中小企業がM&Aを検討する際に、より適切な判断ができるようになることが期待されます。

広告・営業活動に関する規制

M&Aに関する不適切な広告や過剰な営業活動を防ぐため、新たな規制が設けられました。

• 仲介者・FAは、M&Aの実施意向がない企業に対して広告・営業を行うことが禁止されます。
• 虚偽や誤解を招くような広告・営業活動も禁止されます。
• 企業が広告・営業の停止を求めた場合、仲介者・FAはすぐにそれに応じなければなりません。

これらの規制により、中小企業が不要な営業活動に悩まされることなく、必要な時に適切な情報を得られるようになることが期待されます。

利益相反行為の禁止

仲介者が特定の当事者に有利な行動をとることを防ぐため、利益相反行為の禁止事項が具体化されました。

• 譲り受け側から追加で手数料を取得し、便宜を図る行為の禁止
• リピーターとなる依頼者を優遇する行為の禁止
• 一方の当事者にのみ有利な情報を秘匿する行為の禁止

これらの規定により、M&A取引の公平性が高まり、中小企業にとってより信頼できる環境が整備されることが期待されます。

経営者保証の扱いに関する指針

譲り渡し側の経営者保証の扱いについて、新たな指針が追加されました。

• M&A成立前に、保証の解除や移行について金融機関と相談することが推奨されます。
• 最終契約において、経営者保証の解除や移行を明確に位置付けることが重要とされています。
• 金融機関には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づく適切な対応が求められます。

この指針により、経営者保証の問題がM&A取引の障害となるリスクが軽減されることが期待されます。

不適切な事業者の排除

M&A市場から不適切な事業者を排除するための取り組みが強化されました。

• 仲介者・FAは、譲り受け側に対する詳細な調査を実施する必要があります。
• 不適切な行為に関する情報を業界内で共有する仕組みの構築が推奨されています。

これらの取り組みにより、信頼性の高いM&A市場の形成が期待されます。

ネームクリア・テール条項に関する規律

テール条項（契約終了後一定期間内のM&A成立時に手数料を取得する条項）について、新たな規律が設けられました。

• テール条項の対象は、ネームクリアが行われ、譲り渡し側に紹介された譲り受け側に限定されます。
• 複数のM&A専門業者から同一の候補先の紹介を受けた場合、選択されなかった業者はテール条項を根拠に手数料を請求すべきではありません。

最終契約後のリスク事項への対応

最終契約締結後に当事者間でトラブルが発生するリスクを低減するため、以下のような対応が求められます。

• 仲介者・FAは、最終契約の内容に含まれるリスク事項について、当事者に詳細な説明を行う必要があります。
• 特に、経営者保証の扱い、デューデリジェンスの非実施、表明保証の内容などについて、慎重な検討が求められます。

小規模事業者のためのM&A Q&A

Q1: M&Aを検討する際、どのような点に注意すべきですか？

A1: 以下の点に特に注意を払うことをおすすめします：

• 仲介者・FAの選定：手数料体系や提供サービスの内容を十分に確認しましょう。
• 経営者保証の扱い：早い段階で金融機関と相談し、解除や移行の可能性を探りましょう。
• デューデリジェンス：専門家の支援を受けながら、詳細な調査を行うことが重要です。
• 契約内容の確認：最終契約の内容は、必要に応じて専門家のセカンドオピニオンを求めましょう。

Q2: M&Aの費用はどのくらいかかりますか？

A2: M&Aの費用は案件によって大きく異なりますが、主に以下の項目が含まれます：

• 仲介者・FAの手数料：一般的に譲渡額の数%程度ですが、最低手数料が設定されている場合もあります。
• デューデリジェンス費用：会計士や弁護士などの専門家への報酬です。
• その他の諸経費：契約書作成費用、登記費用などが発生します。

具体的な金額は、企業規模や取引の複雑さによって変わるため、事前に仲介者・FAに詳細を確認することをおすすめします。

Q3: M&Aのプロセスはどのくらいの期間がかかりますか？

A3: 一般的なM&Aのプロセスは、以下のような流れで進みます：

1. 準備段階：1〜3ヶ月
2. マッチング：2〜6ヶ月
3. 基本合意：1〜2ヶ月
4. デューデリジェンス：1〜3ヶ月
5. 最終契約締結：1〜2ヶ月
6. クロージング：1ヶ月程度

全体で半年から1年半程度かかることが多いですが、案件の複雑さや当事者の意思決定のスピードによって変動します。

【皆さまにお伝えしたいこと】

今回の中小M&Aガイドライン改訂は、串本町の小規模事業者の皆さまにとっても重要な意味を持ちます。M&Aを通じた事業承継や成長戦略の実現がより身近になる可能性があります。

この記事で知っておくと良いと思われること

• 仲介者・FAの選定基準が明確になり、適切な支援者を見つけやすくなりました。
• 経営者保証の扱いに関する指針が示され、M&A実施の障壁が低くなる可能性があります。
• 不適切な事業者の排除に向けた取り組みにより、M&A市場の信頼性が向上します。

実際に小規模事業者が取り組めること

• M&A支援機関登録制度を活用し、信頼できる仲介者・FAを探すことができます。
• 経営者保証がある場合、早い段階で金融機関と相談し、解除や移行の可能性を探ることができます。
• 事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関を活用し、M&Aに関する無料相談を受けることができます。

これらの知識を活用することで、M&Aを通じた事業の発展や円滑な事業承継の実現に向けて、より具体的な一歩を踏み出すことができるでしょう。

【まとめ】

中小M&Aガイドライン第3版の改訂は、串本町の小規模事業者の皆さまにとって、M&Aをより身近で安全な選択肢にする可能性を秘めています。事業の売却や買収を検討されている方は、この機会に改めてM&Aについて考えてみてはいかがでしょうか。

まずは、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会議所などの公的機関に相談してみることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、自社の将来について考えることで、新たな可能性が見えてくるかもしれません。

M&Aは決して大企業だけのものではありません。串本町の小規模事業者の皆さまにとっても、事業発展や円滑な事業承継の有効な手段となる可能性があります。この改訂を機に、自社の未来について考える一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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