お店や会社の経営者の皆さん、こんにちは。
今回は、令和7年11月1日から変わる和歌山県の最低賃金について、皆さんが安心して対応できるよう、具体的な手順を分かりやすく解説する、いわば「完全ガイド」です。
「また上がるのか…」と感じておられる方も多いと思いますが、これは物価の上昇など、社会全体の流れを受けてのものです。まずは、私たちの店や会社で何を確認し、何をすべきかを一つずつ整理していきましょう。
【出典】
より詳しい国の公式情報については、和歌山労働局のホームページも合わせてご確認ください。
▶ 和歌山労働局:和歌山県の最低賃金について
目次
最低賃金のルールは、思ったよりも少し複雑です。うっかり見落としがないか、一緒に確認していきましょう。
まず大原則として、この最低賃金はパート、アルバイト、学生さんなど、働き方の名前に関係なく、和歌山県で働くすべての人が対象です。
よくご質問をいただくのが、「試用期間中」の従業員さんについてです。「試用期間中は少し安くても良い」と思われていることがありますが、これは間違いです。事前に労働局の許可を得る、という特別な手続きをしない限り、試用期間中であっても1,045円以上を支払う必要があります。
また、他社から派遣されている「派遣労働者」の方についても、実際に働いている場所、つまり皆さんの事業所がある和歌山県の最低賃金が適用されます。
時給制の方は分かりやすいですが、月給制の方の場合は少し注意が必要です。給与明細の「総支給額」を単純に労働時間で割ってはいけません。
正しい計算式:
(基本給 + 毎月固定の手当) ÷ 1か月の平均所定労働時間 ≧ 1,045円
この計算に、以下の手当は含めることができません。
- 含めない手当の例
- 通勤手当(交通費)、家族手当、住宅手当
- 皆勤手当
- 時間外勤務手当(残業代など)
- 賞与(ボーナスなど)
例えば、基本給16万円、役職手当1万円、通勤手当8千円、1日の労働時間8時間、年間出勤日数245日の方の場合は…
この場合、1,045円を下回っているため、見直しが必要だということが分かりますね。
確認が終わったら、次に対応です。難しいことはありませんので、順番に進めましょう。
まず、計算の結果1,045円を下回ってしまった従業員さんについては、給与を引き上げます。そして、11月1日以降の給与計算に間違いなく反映されるよう、お使いの給与計算ソフトなどの設定を変更しましょう。
給与という大切な労働条件が変わるので、従業員さんとの間で「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、書面を準備しておくと安心です。
大げさな雇用契約書を作り直す必要はありません。**「覚書(おぼえがき)」**といって、「給与の金額が〇円から△円に変わります」という点だけを記した簡単な書類を2部作り、お互いに署名・捺印して1部ずつ保管する方法がおすすめです。
法律で、事業主は働く人へ最低賃金の額などを知らせる義務(周知義務)があると定められています。
難しく考えず、「和歌山県の最低賃金は1,045円です。効力発生日:令和7年11月1日」といった内容を紙に印刷して、事務所や休憩室など、従業員さんがいつでも見られる場所に掲示しておきましょう。これだけで義務を果たすことができます。
万が一、最低賃金以上の支払いができていなかった場合、法律で罰則(50万円以下の罰金など)が定められています。
また、後から従業員さんに未払い分をまとめて請求される可能性もあります。こうした思わぬトラブルを避けるためにも、今回のタイミングでしっかりと確認と対応をしておくことが、結果として会社と従業員さんを守ることにつながります。
A1:はい。和歌山県では「鉄鋼業」について、地域別最低賃金よりも高い「特定(産業別)最低賃金(1,103円)」が定められています。ご自身の事業がどちらに当てはまるか、ご確認ください。
A2:時間外の割増賃金は、引き上げ後の新しい時給(1,045円以上)を元に計算する必要があります。
今回の改正について、やるべきことはご理解いただけたかと思います。それでも、ご自身の会社の計算がこれで合っているか、書類の作り方はどうすればいいかなど、ご不安な点も多いことでしょう。
どうか一人で悩まずに、いつでも私たち串本町商工会にご相談ください。私たちは、この町で頑張る事業主の皆さんの味方です。一緒に今後のことを考えていきましょう。
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