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確定申告の時期が近づいてきましたが、帳簿の付け方や電子申告の方法に不安を感じていませんか?特に令和6年度は定額減税制度の導入により、従来以上に正確な申告が求められています。

串本町商工会では、会員の皆様の確定申告に関する疑問や不安を解消するため、実務に即した税務セミナーを開催しました。このセミナーでは、企業会計の基礎から最新の電子申告対応まで、実践的な内容を網羅的に解説したものでした。

本記事では、セミナーの内容を整理し、ネットの最新情報を加味して

について詳しく解説します。これらの知識を身につけることで、正確な確定申告と税務調査への適切な対応が可能になります。

企業会計の基礎となる仕訳のルールについて説明します。

全ての取引は借方(左側)と貸方(右側)に分かれ、金額が同じになる複式簿記の原則に基づいています。基本的な仕訳のルールとして:

資産の増加は借方、減少は貸方に記入します。反対に、負債と資本は増加が貸方、減少が借方となります。また、費用は借方、収益は貸方に記入するという原則があります。

例えば、現金で商品を仕入れた場合:

という仕訳になります。これは費用の増加と資産の減少を表しています。

この仕訳は、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)に反映され、事業の財政状態と経営成績を表すことになります。B/Sは資産、負債、資本のストックを、P/Lは収益、費用のフローを示します。

この基本的な仕組みを理解することで、日々の取引を正確に記帳でき、確定申告に必要な決算書類も適切に作成することができます。特に青色申告の場合、正確な記帳は65万円の特別控除を受けるための重要な要件となります。

個人事業主の確定申告において、青色申告制度は大きなメリットをもたらします。

特別控除制度は3段階で設定され、記帳方法や電子申告の利用状況により控除額が決定されます。

青色申告のメリットとして、少額減価償却資産の特例があります。取得価額が30万円未満の資産は、購入年に全額を経費計上できます。これにより、小規模な設備投資の際の事務負担が大幅に軽減されます。

事業が赤字になった場合でも、その金額を3年間繰り越して将来の黒字と相殺できる制度もあります。これにより、長期的な事業展開を見据えた経営が可能となります。

専従者給与については、青色申告の場合、事前に届出書を提出することで、経営実態に応じた金額を経費として認めています。一方、白色申告では配偶者は年額86万円まで、その他の親族は1人につき年額50万円までという上限が設定されています。

このように、青色申告制度は適切な記帳により、税務上の様々な優遇措置を受けることができる重要な制度となっています。

◆青色申告制度についての詳細:国税庁:青色申告制度

所得税と消費税の申告のための基礎知識として、正確な決算書類の作成が重要となります。

損益計算書(P/L)の作成において、売上金額の計上には特に注意が必要です。

◆家事消費についてはコチラ:弥生株式会社【個人事業主の自家消費(家事消費)とは?】
◆期ズレについてはコチラ:freee会計:期ズレとは?具体例から分かりやすく解説

経費の計上についても、以下の点に留意が必要です。

また、事業用の固定資産を購入した場合は、減価償却費として計上する必要があります。ただし、30万円未満の少額資産については、青色申告のメリットとして即時償却が可能です。

これらの正確な記帳と計算に基づき、最終的な所得金額が算出され、それが確定申告書に反映されることになります。特に青色申告の場合、65万円の特別控除を受けるためにも、複式簿記による正確な記帳が求められます。

減価償却費は、事業用の固定資産の取得価額を使用期間に応じて費用配分する仕組みです。

個人事業主の場合、届出をしない限り定額法が自動的に適用されます(法人は定率法が基本)。計算方法には定額法と定率法の2種類があり、定額法は毎年同額を償却する方法、定率法は残存価額に一定率を掛けて毎年の償却額が逓減していく方法です。

具体例として、令和6年7月7日に購入した300万円の乗用車(耐用年数6年)の場合の定額法による計算:

この計算により、令和6年分は125,250円を減価償却費として経費に算入できます。

計算の順序は、まず年間償却額を算出し、次に取得年の月数で按分し、最後に事業使用割合で按分することが重要です。

なお、取得価額が30万円未満の資産については、少額減価償却資産の特例により、購入年度に全額経費計上が可能です。

◆減価償却についてもっと知りたい方はコチラをご参考に:freee:減価償却とは?償却できる資産や計算方法、耐用年数をわかりやすく解説

消費税の申告について、特に令和5年10月から始まったインボイス制度に関連する内容を説明します。

消費税の申告が必要となる事業者は以下の3つです。

申告方法は事業者の状況により異なります。

【2割特例】

免税事業者からインボイス発行事業者になった方を対象とした制度です。令和5年10月から令和8年9月までの期間、売上に係る消費税額の80%を仕入税額控除として計算できます。

例えば、年間売上600万円(税込660万円)の場合、預かった消費税60万円のうち、48万円(80%)を仕入税額控除として計算できます。事前届出は不要で、申告時に選択でき、課税期間ごとに適用を判断できます。

◆コチラのページもご参考に:国税庁【2割特例特設ページ】

【簡易課税制度】

基準期間の課税売上高が5,000万円以下で届出をした場合に選択可能です。業種ごとのみなし仕入率(卸売90%、小売80%など)により簡易的に計算できます。

【一般課税】

全ての取引を消費税区分(課税10%・8%、非課税、不課税)ごとに区分し、実額で計算する必要があります。特に給付金など不課税となる項目に注意が必要です。正確な区分のため、会計ソフトの活用が推奨されます。

令和6年度の確定申告における注目すべき特別措置として、定額減税制度が導入されました。この制度は、合計所得金額が1,805万円以下の居住者を対象に、本人および同一生計配偶者や扶養親族1人あたり、所得税で3万円、個人住民税(所得割)で1万円の税額控除を行うものです。16歳未満の子供も扶養親族として対象となります。

定額減税制度の利用にあたり、以下の点に特に注意が必要です。

  • 給与所得者の場合:令和6年6月1日以降の給与支払時に、源泉徴収税額から定額減税額が控除されます。控除しきれない場合は、年末調整で精算が行われます。
  • 個人事業者の場合:令和6年分の所得税の第1期分予定納税額(7月)から本人分の定額減税額を控除します。控除しきれない分は第2期分予定納税額から控除し、それでも控除しきれない場合は確定申告で精算します。
  • 確定申告時の記載:確定申告書の該当欄に、定額減税に関する項目が追加されています。対象となる配偶者や扶養親族の人数に応じて、適切に記載してください。
  • 年末調整との関係:年末調整で定額減税を受けた場合でも、確定申告を行う際には、再度定額減税の記載が必要です。
  • 給付措置:所得税額や個人住民税額が定額減税額より少ない場合、控除しきれない金額については、市区町村から給付措置が行われる予定です。

また、電子申告(e-Tax)を利用する際も、定額減税の入力漏れには十分注意しましょう。詳細や最新の情報については、国税庁の定額減税特設サイトをご確認ください。

国税庁:定額減税特別サイト

インターネットを活用した確定申告方法として、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」の利用が推奨されています。従来は、電子申告の利用届出と利用者識別番号(パスワード)の発行が必要でしたが、平成30年分からはマイナンバーカード方式とID・パスワード方式が加わり、選択肢が増えました。

国税庁:確定申告書等作成コーナーオススメ

電子申告の主なメリットとして

電子申告の方法は、状況に応じて選択できます。

マイナンバーカード方式では、ICカードリーダーまたはスマートフォンでカードを読み取ります。スマートフォンの場合、QRコードを読み取ることで、パソコンで作成した申告書データを送信することができます。

特に令和7年1月からは、スマホ用電子証明書を利用することで、マイナンバーカードをスマホで読み取る必要がなくなり、より簡便に申告書の作成やe-Tax送信ができるようになります。ただし、この場合もマイナポータルアプリからスマホ用電子証明書の利用申請・登録が必要です。

このように、電子申告は年々利便性が向上しており、特に還付申告の場合は早期の還付が期待できることから、積極的な活用が推奨されています。

税務調査は、納税者の申告内容が適正であるかを確認するために行われる重要な手続きです。以下に、税務調査の法的根拠と実務的な対応について説明します。

1. 税務調査の法的根拠

税務署の職員には、国税通則法第74条の2に基づき「質問検査権」が与えられています。この権限により、職員は納税者に対して質問を行い、帳簿書類の検査や提示・提出を求めることができます。

2. 調査対象期間

税務調査の対象期間は通常、過去3年間とされています。しかし、申告漏れや誤りが見つかった場合は5年、意図的な脱税や不正行為が疑われる場合は7年まで遡って調査が行われることがあります。

3. 調査の期間と進行

実地調査は通常、2~3日間で終了することが多いですが、調査結果の通知までには約3ヶ月程度かかることが一般的です。調査の進行は、企業の規模や業種、調査内容によって異なります。

4. 調査が行われやすいケース

以下のような場合、税務調査が実施される可能性が高まります。

これらの状況がある場合、決算書の「特殊事情」欄に変化の理由を適切に記載することで、調査官の理解を得やすくなります。

5. 帳簿類の保存期間

個人事業主の帳簿類の保存期間は、申告の種類や書類の内容によって異なります。以下に詳細をまとめます。

1. 青色申告の場合

ただし、消費税の課税事業者である場合、これらの証憑書類も7年間保存する必要があります。

2. 白色申告の場合

また、2023年10月に開始されたインボイス制度により、適格請求書(インボイス)を受け取った課税事業者が仕入税額控除を受ける場合、個人・法人を問わず、該当の請求書を7年間保存する必要があります。

これらの保存期間は、確定申告期限日の翌日から起算されます。具体的には、その年の翌年3月16日から数え始めます。

適切な記帳と資料の保存は、税務調査において非常に重要です。保存期間を遵守し、必要な書類を適切に保管するよう心掛けましょう。

6. 無申告の場合

無申告の場合、税務調査は法定申告期限から5年間遡って行われることがあります。調査も厳格に行われる傾向があるため、適切な申告と記帳が重要です。

7. 税務調査の通知

税務調査は事前通知が原則ですが、証拠隠滅の恐れがある場合など、特別な事情がある場合には無予告で実施されることもあります。

日頃から適切な記帳と資料の保存を心がけることで、税務調査に対する負担を軽減できます。不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

電子帳簿保存法に基づき、電子取引データの適切な保存が求められます。個人事業主が取り組みやすい方法として、以下の3つが挙げられます。

1. 事務処理規程の制定・運用

電子データの保存・管理に関する社内ルールを定めることで、データの適切な管理と改ざん防止を図ります。自身の業務フローに合わせて簡潔な規程を作成し、遵守することで対応が可能です。

2. クラウドサービスの利用

電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスを利用することで、電子データの保存・管理が容易になります。これらのサービスは、データの改ざん防止機能や検索機能を備えており、法令遵守をサポートします。特に、ITに詳しくない場合でも、直感的な操作で利用できるものが多く、導入しやすいといえます。

3. ファイル名の工夫

電子データのファイル名を工夫することで、検索機能の要件を満たすことができます。具体的には、ファイル名に「取引年月日」「取引金額」「取引先名」を含めることで、必要な情報を迅速に検索・参照できるようになります。この方法は、特別なシステムを導入しなくても実践できるため、個人事業主にとって取り組みやすい手段です。

これらの方法を組み合わせることで、電子帳簿保存法の要件を効率的に満たすことが可能です。自身の業務形態やリソースに合わせて、適切な方法を選択・実践してください。

本記事では、令和6年度の確定申告における重要な変更点と実務のポイントについて解説しました。セミナーの内容から、特に押さえておくべきポイントは以下の通りです。

  • 定額減税制度の活用
    所得金額1,805万円以下の方が対象となる新制度です。本人・配偶者・扶養親族1人あたり所得税3万円、住民税1万円の控除が受けられます。給与所得者は年末調整で、個人事業主は予定納税や確定申告時に控除手続きを行います。
  • 青色申告のメリットを最大化
    最大65万円の特別控除に加え、専従者給与の計上や少額減価償却資産の特例など、様々な優遇措置があります。これらを活用するためには、日々の正確な記帳と7年間の帳簿保存が重要です。
  • 電子申告で効率化
    マイナンバーカードを使用したe-Taxで、還付金の早期受け取りや各種証明書の提出省略が可能です。令和7年1月からはスマホでの電子証明書利用も始まり、より便利になります。

確定申告は、単なる納税手続きではなく、事業の健全な発展を支える重要なツールです。不明な点があれば、まずは串本町商工会へご相談ください。

▶ 詳しい情報は、国税庁の特設サイトや「確定申告書等作成コーナー」もご活用ください。

国税庁:令和6年度確定申告特集
国税庁:確定申告書等作成コーナー


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