
みなさん、こんにちは。師走に入り、商店街も年末の慌ただしさを感じる季節になりましたね。
さて、今月お手元に届いた『月刊商工会12月号』、もう目を通されましたでしょうか? パラパラとめくって、「他県の成功事例なんて、うちのような小さな店には関係ないよ」と閉じてしまった方もいるかもしれません。
しかし、今回の特集は、まさに今、ここ串本町で商売を営む私たちが直面している「ロケット特需」「後継者不足」「人手不足」「災害リスク」という4つの課題へのヒントが満載でした。
今回は、この冊子に掲載されている全国の事例を紹介しつつ、それを「これからの串本町でどう活かすか」という視点で、私なりに分析してみました。 来たるべき「宇宙時代」と、備えるべき「災害」を生き抜くために、少しだけお時間をください。この記事を読み終える頃には、きっと「商工会に相談してみようかな」と思っていただけるはずです。
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12月号の特集記事では、佐賀県の道路工事専門会社「サガ・コア&カッター工業株式会社」様の事例が紹介されています。 1999年創業の同社は、下請け中心の経営から脱却し、工事単価を上げたいと考えていました。そのためには、汚泥を処理する「マジカルベコップ」という高額な機械を導入する必要がありましたが、約500万円という投資額に踏み切れずにいたのです。
そこで商工会に相談したところ、担当の経営指導員からかけられた言葉は意外なものでした。 「箇条書きでも単語だけでもいいので、まずは社長の考えや思いを書いてください」 難しい書類作成を指示するのではなく、まずは経営者の頭の中にある「夢」や「課題」を言葉にすることから始めたのです。
指導員との対話を通じて、同社は「騒音を減らしたい」「環境に配慮した工事がしたい」という自社の強みを再発見。そのストーリーを「経営計画書」に落とし込み、見事「ものづくり補助金」の採択を勝ち取りました。 その後も、商工会の伴走支援を受けながらIT化や人材採用に取り組み、事業承継を経て売上を3億円規模まで拡大されています。

「経営計画」と聞くと、大企業が作るものだと敬遠されがちですが、この事例が教えてくれるのは、「自分の想いを言葉にすることが、事業を強くする」というシンプルな真実です。
串本町はいま、日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」の稼働という、歴史的な転換点にあります。ロケット需要は、単に「打上げを見る」だけではありません。
これらのチャンスを掴むためには、やはり「計画」が必要です。「なんとなくやってみよう」では、在庫を抱えたり、人手が足りずにチャンスを逃したりしてしまいます。
まずは商工会へお越しいただき、雑談感覚で構いませんので、皆さんの「やりたいこと」をお聞かせください。商工会では、定期的に専門家による相談会も開催しています。経営のプロである「よろず支援拠点」のコーディネーターに無料で相談できる機会などを活用し、一緒に頭の中を整理してみませんか?
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東京・調布市で40年以上愛されてきた「ひたち屋書店」様の事例をご紹介します。 店主の佐野さんは70歳を超え、体力的な限界から「もう廃業するしかない」と考えていました。しかし、長年地域に親しまれてきた本屋の灯りを消してしまうのは忍びない。 そこで商工会に相談し、紹介されたのが、事業承継のマッチングプラットフォーム「バトンズ」への登録でした。
デジタルに不慣れな佐野さんでしたが、商工会やご家族のサポートを受けながら情報を公開。すると、「本屋をやりたい」という熱意ある明壁さんという女性と出会うことができたのです。 明壁さんは、元々飲食店での開業を考えていましたが、「一から作るより、既存のお店を引き継ぐ方が夢に近い」と判断。商工会の支援のもとで事業譲渡(M&A)が成立し、お店は「本屋ふらふらっと」として生まれ変わりました。 佐野さんが守ってきたお客様との信頼関係はそのままに、新しい店主のもとで、今も地域の憩いの場として営業を続けています。

このお話は、決して東京だけの話ではありません。串本町内でも、「子供は町外に出ていて継ぐ人がいない」「自分の代でお店を畳もうか」と考えている経営者の方は少なくありません。 帝国データバンクの調査によると、和歌山県内の後継者不在率は約43%(2023年時点)。このままでは、町のインフラとも言えるお店や技術が次々と失われてしまいます。
しかし、「廃業」だけが選択肢ではありません。 串本町では今、古民家を活用したホテル「NIPPONIA」のように、町外の若者や企業が、私たち地元の人間には「維持が大変な古い建物」に見えるものに価値を見出し、再生させる事例が増えています。
「うちのような小さな店は売れないだろう」と諦める前に、一度私たちにご相談いただけませんか。 事例のように、親族以外の方にお店を引き継ぐ(M&A)という方法もあります。商工会の「経営特別相談会」には、「事業承継・引継ぎ支援センター」の相談窓口も設けられています。秘密厳守で相談できますので、まずは「つなぐ」可能性を探ってみましょう。
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福岡県でご夫婦で経営されている理容室「BARBER GRowth」様の事例です。 技術には自信があるご主人と、それを支える奥様。しかし、日々の忙しい業務の合間を縫っての経理作業が、大きな負担になっていました。「家事をしながらお店の手伝いもしないといけない。正直、数字の管理まで手が回らない」というのが本音だったそうです。
そこで、商工会の勧めで導入したのが「クラウド会計」でした。 最初は「パソコンは苦手だし…」と戸惑いもあったそうですが、銀行口座とソフトを連携させることで、これまで手入力していた明細が自動で取り込まれるようになり、作業時間は劇的に短縮。 さらに、商工会の職員とクラウド上でデータを共有できるため、わからないことがあればすぐに画面を見ながらアドバイスをもらえる安心感もありました。 結果として、面倒な事務作業から解放され、空いた時間を本業の技術向上や、ご家族と過ごす大切な時間に充てることができるようになったのです。

串本を含む紀南地域でも、人手不足は深刻です。和歌山県内の企業の約4割が人手不足を感じており、求人を出しても応募が来ないという状況が続いています。 2025年11月には最低賃金も上がる見込みです。「人を雇って解決する」という方法は、もはや難しくなっています。
だからこそ、私たちはデジタルの力で「時間を買う」必要があります。 「パソコンは苦手だから」と言っている猶予はありません。
デジタル化は、決して「冷たい対応」にすることではありません。事務作業の時間を減らし、その分を「お客様への温かい接客」や「新メニュー開発」に使う。これこそが、人口減少時代を生き抜くための「攻めのDX」です。 串本町商工会でも、クラウド会計ソフト「MA1」の導入支援を行っています。まずは「一番面倒な作業」を一つ減らすところから始めましょう。
▶【業務効率化】商工会推奨のクラウド会計ソフト「MA1」についてはこちら

広島県の屋根工事業者「株式会社アサヒ工業」様の事例は、私たちにとって他人事ではありません。 2018年の西日本豪雨で、同社の本社は浸水被害に遭いました。コピー機も工具も水没し、仕事が止まる危機に直面。しかし、商工会の勧めで事前に加入していた「ビジネス総合保険」のおかげで、被害額約400万円が迅速に補償されました。 「保険金が出るかどうかの判断が早かったので、すぐに復旧作業に取り掛かれた」と社長は語ります。もし保険に入っていなければ、工具の買い替えをすべて自己負担で賄わなければならず、精神的にも追い詰められていたでしょう。
また、鹿児島県の養豚業者「有限会社大成畜産」様は、従業員の怪我や病気に備えて商工会の「福祉共済」に加入。危険を伴う現場作業において、万が一の際の補償があることが、従業員の安心感につながり、人材確保にも役立っているという事例も紹介されていました。

ここは特に力を込めてお伝えしたい部分です。 串本町は台風の通り道であり、何より南海トラフ地震のリスクと隣り合わせです。 内閣府の想定では、巨大地震発生時、串本町への津波到達時間は「最短3分」とされています。 3分です。揺れが収まってからではなく、地震発生からです。 つまり、通帳や印鑑、商品在庫、パソコンを持ち出す時間は「ゼロ」だと思ってください。
防潮堤などのハード対策は行政の仕事ですが、被災後の「生活と事業の再建資金」を守るのは、皆さん自身の仕事です。 建物が流されても、再開まで数ヶ月休業を余儀なくされても、保険や共済に入っていれば、「お金の心配」だけは減らすことができます。
「揺れたら何も持たずに逃げる。お金は保険で出るから心配するな」
従業員やご家族と、この約束ができていますか? ハザードマップを確認し、今の保険で本当に会社を再建できるか、私たちと一緒に見直してみませんか。 商工会の「商工会ビジネス総合保険」なら、事業活動における様々なリスクを包括的に補償し、スケールメリットを活かした割安な掛金で加入できます。
▶【転ばぬ先の杖】商工会ビジネス総合保険の詳細はこちら(全国商工会連合会)

ロケットによるチャンスと、地震や人口減少というリスク。串本町は今、まさに激動の中にあります。 「どうせうちなんて…」と下を向いてしまう前に、ほんの少しだけ顔を上げてみませんか?これらを個人の努力だけで乗り越えるのは困難です。だからこそ、私たち商工会がいます。
今回の記事でご紹介したように、「計画を作る」「後継者を探す」「デジタル化する」「保険で備える」、どの入り口からでも構いません。 まずは、商工会のドアを叩いてみてください。「ちょっと近くまで来たから」という雑談で十分です。
「パソコンが苦手だから帳簿の付け方を教えてほしい」 「補助金ってうちでも使えるの?」 「実は、店を畳もうか迷っている…」 そんな皆さんの「困った」や「やりたい」という生の声こそが、私たちが一番聞きたい言葉です。
一人で抱え込まず、一緒に考え、一緒に汗をかきましょう。 私たちは、いつでも皆さんのそばにいます。まずはお電話、または窓口まで、お気軽にお越しください。職員一同、心よりお待ちしております。
