先日も悩める一人親方が相談にいらっしゃいましたので、今回はインボイス制度の影響を受ける「一人親方」の会員さんに向けて、インボイスを発行する側についての概要を説明いたします。
まずは 消費税の納付のしくみに触れたいと思います。
消費税は誰が支払っていますか。その名前の通り 消費者の方ですね 。消費者の中には一般の個人の方もいますし 事業者もいます。
では、消費税を税務署に納めているのは誰でしょうか。そうです。事業者の方たちですね。そして納付の方法によって、以下のように3つのパターンに分かれます。
🙂本則課税事業者 :
【納める消費税】=【売った時に受け取った消費税】ー【買った時に支払った消費税】
🙂簡易課税事業者:
【納める消費税】=【売った時に受け取った消費税】ー【売った時に預かった消費税】×【みなし仕入れ率】
※みなし仕入率:国が定めた業種ごとの仕入れ率
🙂免税事業者:売った時に受け取った消費税は納付しないので、事業者の手元に残ります。
インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」と言います。(正式名称が長いので以後の説明では「インボイス制度」に統一していきます。)
そして、税務署が適格であると認める請求書を「インボイス=適格請求書」といいます。この請求書は「買った時に支払った消費税」を認めてもらうための請求書です。「インボイス」は普通の請求書ではないのです。
インボイスを発行するには、「適格請求書発行事業者」に登録する必要があります。
そもそも、インボイス制度に登録する必要があるのでしょうか?
お客様がインボイスを必要としないのであれば、従来のままの免税事業者であっても問題はありません。
ただ一人親方の場合、請負契約をされる方が多いと思われます。元請けが課税事業者で本則課税事業者であれば、インボイスを必要とされます。
インボイスに登録せず、免税事業者で仕事を請け負った場合、元請け事業者が免税事業者分の消費税を負担しなければならなくなります。
「例」を使って説明します。
(例)元請け A建設会社:
年間売上高・6,600万円 【税抜き売上高6,000万円・消費税600万円】
材料費や外注費などの課税経費・5,280万円 【税抜き経費4,800万円・消費税480万円】
🙂仕入先や外注先がインボイスでの請求であった場合
納める消費税:600万円-480万円=120万円
🙂外注費の中に免税事業者の一人親方Bさんの外注費550万円が入っていた場合。
(免税事業者であっても 税込み価格で請求します。税抜き価格での請求はできません。)
A建設会社の支払った消費税:5,280万円ー550万円=4,730万円(消費税430万円)
納める消費税:600万円ー430万円=170万円
この場合、元請けA建設会社は、一人親方Bさんの消費税を肩代わりすることなり、納める消費税が50万円増えます。
こうなるとA建設会社は、インボイス制度に登録して課税事業者であることがはっきりしている別の親方に今後は仕事を任すことにもなりかねません。
現在、課税事業者の方は「インボイス制度」に登録することで「インボイス」の発行ができるようになります。
そして、現在、免税事業者の方は「インボイス制度」に登録することで、課税事業者となり「インボイス」の発行ができるようになります。課税事業者になると「本則課税事業者」になるか「簡易課税事業者」になるかを選びます。
本則課税事業者になると、納める消費税額を計算するために帳簿をくわしく付ける必要があります。
簡易課税事業者は本則課税ほど手間はかかりません。売上金額がわかれば計算できます。
簡易課税制度の納税計算は、先にも書いたように、以下の式で計算されます。
【納める消費税】=【売った時に受け取った消費税】ー【売った時に預かった消費税】×【みなし仕入れ率】
※みなし仕入率:国が定めた業種ごとの仕入れ率
建設業に従事する一人親方であれば、
🙂 原材料等が自前の場合、第三種事業になり、みなし仕入れ率は70%です。
🙂 原材料が元請けから支給される場合、第四種事業になり、みなし仕入れ率は60%です。
(例)一人親方B:年間売上高・550万円(うち消費税50万円)
🙂 第三種事業の場合:50万円-50万円×70%=50万円-35万円で、納付する税額は15万円です。
🙂 第四種事業の場合:50万円-50万円×60%=50万円-30万円で、納付する税額は20万円です。
上の例からもわかるように、納める消費税額は第三種事業であれば、税抜き売上金額の3%、第四種事業であれば、税抜き売上金額の4%になります。この金額をその都度、納税貯金していけば、納付時にあせることもなくなりますよ。
🙂 消費税を納めるのは、事業者です。
🙂 インボイスは税務署が適格であると認める請求書です。インボイスでないと「買った時に支払った消費税を認めてもらうことができません。
🙂 インボイスはインボイス制度に登録することで発行ができるようになります。
🙂 簡易課税制度は「売上金額」がわかれば、計算ができます。
🙂 建設業に従事する一人親方は、消費税の事業区分が第三種事業と第四種事業の場合があります。
建設業の一人親方がインボイスを発行する場合についてまとめてみました。インボイス制度はもっと確認する項目がたくさんあります。ほかの経営指導員が書いた記事とも関連しています。それらも参照してください。準備はまだ間に合います。わからないことがあれば、商工会までご連絡ください。
(経営指導員 吉村牧子)
消費税インボイス制度について、いろんな記事がありますが、それらのまとめ記事がコチラです。
★令和5年10月1日開始【消費税インボイス制度】まとめ