いよいよ今年10月10日からインボイス制度がはじまります。
商工会では、会報やセミナーを通じて内容をお伝えしてきました。
今回はその中で多かった質問についてわかりやすく解説いたします。
目次
免税事業者のままではインボイスの登録はできません。
インボイスの登録を行うと課税事業者となり、消費税を納める義務が発生します。
商品の販売やサービスの代金には、一部の例外をのぞいてすべて消費税がかかります。
例えば「うちは消費税をもらってない」という居酒屋さん(免税事業者)が500円の生ビールを販売し代金をいただいたとします。
消費税もらってないから、インボイスは関係ないよね
この場合は、消費税なしでビール代500円をいただいたことにならず、代金500円を税率10%で割りもどして、ビールで455円・消費税で45円をいただいたことになります。
法律上は、消費税の納付を免除されているだけで、お客様からは消費税を預かったことになっています。
販売先が一般客の場合は、インボイス請求書を求められることは少ないと思います。
居酒屋さんが課税事業者の場合は、消費税を納めるときに自分の売上げの消費税と酒屋さんから仕入れたときの消費税を差し引きするため、酒屋さんにインボイス請求書を求めることが考えらます。
よく分からないな?
次の図のように、酒屋さんがインボイス請求書を発行する・しないで、居酒屋さんの納める消費税は大きく変わってきますので、居酒屋さんとしてはインボイス請求書が必要になってくるわけです。
そのため、酒屋さんは免税事業者だから関係ないと考えず、インボイスの登録をするか検討をしておく必要があります。
インボイス登録しないと居酒屋さんからの注文がなくなるの?
前の図の場合、居酒屋さんは売上と仕入の消費税を差し引きしておさめます。この居酒屋さんのように、仕入れ先にインボイス登録事業者を望んでいるケースは多いと思います。
仕入れの消費税は負担が大きいからね~
納品する立場の酒屋さんとしては、インボイスを登録すると新たに消費税の負担が出てくるため、非常に悩むところだと思います。
取引がなくなる・消費税の負担 どちらもツライよ~
一方、この居酒屋さんが簡易課税の場合は、売上額だけで消費税がきまるため、酒屋さんがインボイスを登録していなくても影響がありません。まずは話し合うことが必要です。
簡易課税なら、インボイス請求書なくても大丈夫ですよ
それなら今までどおりお願いします!
また、話し合いをする場合は、買い手側が仕入先の免税事業者に対して、一方的に消費税分の値引きや取引中止を通告することは問題となるおそれがありますので、お互いに納得できるように注意が必要です。
取引先に対してインボイスの登録を要請すること自体は問題ありません。
しかし、インボイスの登録を要請するだけでなく、
①登録しなければ、取引価格を引き下げる。
②応じなければ取引を打ち切ることにする。
などを一方的に通告することは、独占禁止法または下請法上で問題となるおそれがあります。
例えば、酒屋さんが免税事業者のままで価格の維持を求めているのに、居酒屋さんが価格を引き下げる理由を書面や電子メール等で回答せずに、引き下げた代金しか払わない場合などが該当します。
消費税おさめてないなら、その分差し引いて支払えばいいよね。
また、酒屋さんが「要請に応じてインボイスの登録をするので、消費税分を価格に上乗せしたい」と申し出ても協議せず、据え置いた代金しか払わない場合なども該当します。
前のままの代金しか払わないよ。
取引先の免税事業者との間で、取引価格などについて交渉する場合には、仕入側の都合だけで低い価格を設定するなどをしないよう、十分に協議を行う必要があります。
取引に関するご相談・お問い合わせは、中小企業庁または公正取引委員会の相談窓口をご利用ください。
■取引に関する相談窓口
公正取引委員会 近畿中国四国事務所 下請課
中小企業庁 近畿経済産業局 産業部中小企業課
■建設関係に関する相談窓口
公正取引委員会 近畿中国四国事務所 取引課
(公正取引委員会などの詳細版)取引先のインボイス制度への対応に関するQ&Aはこちら
※画面の下の方に電話番号があります。
登録には一定の期間がかかりますので、10月1日の直前に申請を行った場合は、開始日までに通知が届かない場合があります。
その場合は、インボイス請求書がおくれることを伝えて了承をもらっておいて、
インボイス登録の通知がまだなので、請求書が少しあとになります。
①通知が届いてから請求書を送付。
②インボイス番号なしの請求書を送付し、通知が届いたあとにあらためて発行しなおす。
③「請求書番号〇〇番に関する通知」などと題して、前に発行した請求書の関連を示して、不足している事項(登録番号等)をあとで通知する。
という対応をしても差しつかえありません。
必要事項を記載すれば、手書きの請求書でも差しつかえありません。
売上が1000万円未満の場合は、「登録取り消届出書」を税務署に提出すれば免税事業者に戻ることができます。
ただし、売上が1000万円未満だからといって自動的に戻るものではなく、必ず届出書の提出が必要ですのでご注意ください。
登録取り消届出書:登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出手続はこちら
〇消費税をもらってないから関係ないと考えず、取引先と話し合いをしてインボイスの登録をするか検討をしておく必要があります。
〇仕入先にインボイスの登録を依頼する場合には、一方的に自分に有利な取引条件を決めるなどの行為は問題となりますので、お互いに納得できるよう話し合う必要があります。
〇免税事業者は、インボイスの登録をすると消費税を納める必要があります。
〇10月1日までにインボイスの登録通知がなくても、取引先に承諾をもらっておいて、後で必要事項を伝えれば大丈夫です。
〇インボイス請求書は手書きのものでも問題ありません。
〇届出書を提出すれば免税事業者に戻れます。
国税庁「インボイス制度に関するQ&A」でも、問いあわせの多い質問が掲載されていますのでご覧ください
消費税インボイス制度について、いろんな記事がありますが、それらのまとめ記事がコチラです。
★令和5年10月1日開始【消費税インボイス制度】まとめ