私たちの住む串本町は、南海トラフ地震のリスクや台風被害が懸念される地域です。皆さんは大切な会社を守るための対策が十分にできていますか?
多くの事業者が「何から始めればいいかわからない」「対策のコストが心配」といった悩みを抱えています。こうした状況は経営の不安定さにつながり、取引先や金融機関からの信頼にも影響しかねません。
串本町商工会では、経済産業大臣による認定制度「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」の策定支援に取り組んでいます。この制度はBCPの簡易版として中小企業でも取り組みやすく設計されています。
この記事では、事業継続力強化計画の認定を受けることで得られる10の具体的なメリットについて詳しく解説します。この記事を読むことで、(1)金融機関や税制面での優遇措置の内容、(2)補助金審査での加点対象となる制度、(3)企業イメージや社会的信頼向上につながる効果を知ることができます。
認定取得は単なる災害対策ではなく、経営基盤の強化と事業発展のチャンスです。ぜひこの機会に、貴社の事業を守るための第一歩を踏み出しましょう。
◆事業継続力強化計画についての詳細はこちらを御覧ください
事業継続力強化計画(ジギョケイ)とは何か
事業継続力強化計画は、自然災害や感染症等のリスクに備え、中小企業が防災・減災対策を整理・取りまとめた計画です。これはBCP(事業継続計画)の簡易版として位置づけられ、中小企業でも取り組みやすい内容となっています。
この計画を策定し経済産業大臣の認定を受けることで、金融支援や税制措置、補助金の加点といった様々な支援を受けることができます。事前の備えが、危機発生時の事業継続力と早期復旧につながるのです。
認定取得で得られる10のメリット
1. 補助金審査での加点措置
事業継続力強化計画の認定を受けると、以下の補助金審査で加点対象となります。
具体的メリット:
- ものづくり補助金:審査において加点され、採択率アップに直結(申請締切日時点で認定を受けている必要あり)
- 小規模事業者持続化補助金:審査において加点対象となり、採択される可能性が高まる
- IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠):審査での加点対象
- 加点により採択確率が大幅に向上し、設備投資や経営力強化のチャンスが広がります
◆小規模事業者持続化補助金についてはこちらを御覧ください
2. 防災・減災設備の税制優遇措置
青色申告書を提出する中小企業で計画認定を受けた企業が対象設備を取得した場合、特別償却が適用されます。
具体的メリット:
- 対象設備取得価額の16%を特別償却可能(令和7年4月1日以降の取得分)
- 対象設備例:自家発電設備、浄水装置、耐震・制震・免震装置、止水板、感染症対策のためのサーモグラフィなど
- 認定後1年以内に予定した設備導入を行う必要があります
- 例)1,000万円の自家発電設備を導入した場合、通常の減価償却に加えて160万円を初年度に償却できる
3. 日本政策金融公庫による低利融資
事業継続力強化計画の認定を受けると、日本政策金融公庫の「災害対策融資」を低金利で利用できます。
具体的メリット:
- 基準利率から最大0.9%の引き下げ
- 設備資金だけでなく、運転資金も対象になる場合がある
- 融資限度額:中小企業事業は7億2,000万円、国民生活事業は7,200万円
- 事業継続力強化に必要な設備投資を低コストで実現できる
4. 信用保証枠の拡大(別枠保証)
認定事業者は、民間金融機関から融資を受ける際に、一般保証とは別枠の保証を受けることができます。
具体的メリット:
- 普通保険:2億円 → 追加で2億円(別枠)
- 無担保保険:8,000万円 → 追加で8,000万円(別枠)
- 特別小口保険:2,000万円 → 追加で2,000万円(別枠)
- 融資を受けやすくなり、資金調達の幅が広がる
5. 損害保険料の割引
多くの損害保険会社では、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者向けに、企業向け保険の保険料を割引するサービスを提供しています。
具体的メリット:
- 各保険会社の企業向け保険で保険料の割引が受けられる
- 例)三井住友海上のビジネスキーパー(事業活動総合保険)ではリスク実態に応じた割引検討が可能
- リスク評価が向上し、保険料の見直しに役立つ
- 新規保険契約だけでなく、更新時にも適用される場合がある
6. 企業イメージ・社会的信頼の向上
認定を受けることで、企業としての社会的信頼を獲得することにつながります。
具体的メリット:
- 認定ロゴマークの使用権取得:自社のホームページや名刺、パンフレットなどに掲載可能
- 中小企業庁ホームページでの公表:認定企業として公表され、企業イメージの向上につながる
- 取引先からの信頼性向上:災害時にも継続して取引できる信頼できるパートナーとして評価が高まる
- 投資家や金融機関からの評価向上:リスク管理がしっかりした企業としての評価につながる
- 緊急事態発生時に迅速かつ効果的な対応ができれば、市場での存在感が増し、ブランドイメージが向上
7. 平時からの経営改善・経営基盤の強化
計画策定のプロセスを通じて、平時の経営改善にもつながります。
具体的メリット:
- 自社の事業継続に関わるリスクを洗い出すことで、経営課題の早期発見や改善が可能に
- 重要業務の見直しやレイアウト・動線の改善などによる業務効率化
- 事業継続の観点から自社の強み・弱みを把握でき、経営戦略に活かせる
- 平時からの推進体制構築や社員への意識啓発、訓練実施などで組織力が向上
8. 従業員の安心感・満足度向上
災害発生時の対応を明確にすることで、従業員の安心感や満足度が向上します。
具体的メリット:
- 災害時の従業員の安全確保策が明確になり、従業員が安心して働ける環境が整う
- 緊急事態による事業縮小や倒産リスクの低減は、雇用の安定につながる
- 会社が従業員の安全を重視していることが伝わり、従業員のモチベーション向上につながる
- 災害時の対応手順を明確にすることで、従業員の不安を軽減
9. サプライチェーンにおける信頼性向上
現代社会ではサプライチェーンが複雑化しており、一社の被災が全体に影響します。
具体的メリット:
- 事業継続計画を持つ企業として、取引先からの評価が向上
- 大企業との取引において、BCPの策定が取引条件となるケースも増加中
- 災害時でも供給責任を果たせる企業として、取引拡大のチャンスにつながる
- サプライチェーン全体での事業継続力向上への貢献が社会的評価を高める
10. 緊急時における迅速対応と早期復旧
事前に対策を講じておくことで、災害時の被害を最小限に抑え、早期復旧が可能になります。
具体的メリット:
- 緊急時の対応手順が明確になり、初動対応が迅速化
- 重要業務を絞り込むことで、限られたリソースを効率的に活用
- 被災後も可能な限り短期間で事業を復旧させることが可能に
- 早期復旧により顧客流出を防ぎ、事業縮小や倒産リスクを軽減
- 経営環境の変化が激しい現代において、事業の早期復旧能力は競争力の源泉に
連携型の計画で得られる追加メリット
複数の企業が連携して策定する「連携型」の計画には、さらなるメリットがあります。
具体的メリット:
- 災害時に被災した企業を他の連携先が助け合う「お互い様連携」が可能に
- 平時においても、不得意分野の補完、共同生産・受注、販路開拓などのビジネスチャンスが拡大
- 地域全体の災害対応力向上に貢献し、地域経済の活性化に寄与
- 連携による情報・ノウハウの共有で、単独では難しい取り組みが実現可能に
串本町商工会の事業継続力強化計画策定支援
令和7年度、串本町商工会では東京海上日動火災保険株式会社と連携し、地区内小規模事業者の事業継続力強化計画策定を支援します。
- セミナー開催:9月に計画策定セミナーを実施予定
- 個別支援:10事業者の計画策定を個別にサポート
- 専門家派遣:東京海上日動火災保険株式会社の専門家が支援
多くの経営者にとって、何から始めればよいか分からない災害対策ですが、商工会のサポートを受けることで、スムーズに計画策定を進めることができます。
この記事のポイント:事業継続力強化計画で企業価値を高める
本記事では、事業継続力強化計画の認定取得によって得られる具体的なメリットについてご紹介しました。重要なポイントは以下の通りです:
- 事業継続力強化計画は、BCP(事業継続計画)の簡易版として中小企業でも取り組みやすい制度です
- 認定取得により、補助金審査での加点、低利融資、税制優遇など多くの経営支援が受けられます
- 災害対策だけでなく、企業イメージの向上や従業員の安心感の醸成など、平時の経営にも効果があります
事業継続力強化計画の策定と認定取得は、串本町のような自然災害リスクの高い地域の事業者にとって特に重要です。計画策定のプロセスを通じて自社の強みと弱みを再確認し、経営基盤の強化につなげることができます。
災害への備えは、明日からでは遅いかもしれません。今日から、貴社と地域の未来を守る一歩を踏み出しませんか。串本町商工会は皆様の事業継続力強化を全力でサポートします。